フランス夫妻と別れた翌日、ベルリン博物館島の敷地にある旧ナショナルギャラリーを1人で訪ねた時のこと。
博物館が取り囲む広場を歩いていると、ふと小さな影が近づいてきた。
13歳前後の女の子。
紙切れを手にして、それをこちらに見せてくる。
“SOME MONEY PLEASE.”
この後には、「私は5人兄妹の長女で〜」という内容が続く。
見事にロックオンされ、どうすればいいか狼狽えつつ、財布を取り出し1ユーロ硬貨(当時133円程)を彼女に差し出した。
すると彼女は「こっち。」と財布の中の札を指差す。
「こっちはダメ。」と言うと、彼女は舌打ちをした挙句1ユーロをひったくるようにして立ち去っていった。
なんとなく腑に落ちないモヤモヤを抱えながらも、どうしようもないので目的の旧ナショナルギャラリーへ。
ギャラリーを周り終えて出てくると、ちょうど広場の反対側に、彼女の姿が見えた。
側にいる白人の老夫婦にお恵みをいただいたらしい。お札を手にホクホクしている。
これが旅の中で何度も頭を悩ませることになる、物乞いの子どもたちとのファーストコンタクトだった。